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旧枠モダンを語る。旧→http://mesmericmask.diarynote.jp/ 欲しいものリストhttps://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/2FNE62OF99FHJ?ref_=wl_share

2018/9/16 第4回GP旧枠モダン メタゲームブレイクダウン

2018年9月16日。4度目となるGP旧枠モダンが秋葉原で開催された。旧枠モダン界の頂点を目指して集ったピットファイター満員御礼の24名。図らずも世界選手権と同規模での開催となり、事前告知通りの予選スイスラウンド4回戦+決勝3回戦が確定した。

また、『ラヴニカのギルド』のカード公開が予想よりも遅かったため、当初の予定である「『ラヴニカのギルド』収録カードを使用可とする。」というルールは撤回され、『基本セット2019』までのカードプールとなった。これによりプレイヤーたちは新規カードによるダークホースの出現を恐れることなく、慣れ親しんだデッキでGP旧枠モダンに臨むこととなった。

――かくして、世界最高峰のGP旧枠モダンが幕をあけたのである。 

 

今回のGP旧枠モダンは、旧枠モダンの隆盛に多大なる影響をもたらした広報の方が不参加(※諸説あり)であったため、代わりに筆者がまとめを作成することになった。

本文の形式、雰囲気は狐の社様をリスペクトさせていただく。拙文ご容赦願いたい。

 

www.inari9th.com

偉大なるリスペクト元

 

2018/9/16 GP旧枠モダン

フォーマット:旧枠モダン(~『基本セット2019』)

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なんという情報量、なんという多様性。恒例の円グラフもたわしやパジェロが当たりそうなほどにカラフルな出来映えである。

もはや常連ともいえるアーキタイプもあるが、今まで話にも上がらなかったような新たな勢力が多数見受けられる。

今回はそんな萌芽たちと、激戦を制してTOP8入賞を果たした強者を中心に解説させていただこう。

 

 

 

・蘇るもの

 今回のGP旧枠モダンを語る上で外せないであろうデッキから語らせていただく。

マジックの勝負はメインデッキの60枚に加え、サイドボードの15枚を用いることは誰もが知っているだろう。サイドボードは自身の苦手とするデッキへの対策や、環境に存在するコンボデッキを機能不全にするためのカードを採用するのが基本だ。

だがもし、これから対戦するデッキがまったく読めない場合は?

そんな時、人は無難な対策カードを取ることになる。通常メインデッキで触れることのできないエンチャントやアーティファクトへの対策、追加のクリーチャー除去、そして――

 

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無難な墓地対策

《トーモッドの墓所》はあらゆるデッキへと投入できる無難な墓地対策カードだ。しかしながら、過去のGP旧枠モダンにおいてはほとんど活躍することなくサイドボードを圧迫し続けていた。

4度目の開催となるこのGP旧枠モダンで、賢者たるプレインズウォーカーは同じ過ちを繰り返すのだろうか?答えはである。

旧枠モダンに取り憑かれた一部のプレイヤーは、この《獣群の呼び声》のフラッシュバックを封じるくらいしか役目のない《トーモッドの墓所》をカード未満であるとしてサイドボードから抜き去ったのだ。

かくして、忘却の彼方にあったデッキが蘇ったのである。

 

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もはや存在しないとは言わせない。

黒緑リアニメイト

旧枠モダンでは組みづらい対抗2色の組み合わせではあるものの、墓地肥やし要因である《根囲い》や、フィニッシャーを兼ねることもある《よじれた嫌悪者》によって比較的安定したマナベースを実現している。

《よりよい品物》はあまり見かけることのないカードだったが、このデッキにおいては《獣群の呼び声》の象トークンによって手札を入れ替えたり、除去されそうになったフィニッシャーを生贄に次なる脅威を用意したりと様々な役割がある。

今回の成績は振るわなかったものの、今後定番として定着することもありうる、要注目のアーキタイプだ。

 

そしてリアニメイトは黒だけにあらず、白いリアニメイトデッキにも注目だ。

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大金持ちになれるぞ!

緑白リアニメイトはアグロデッキを強く意識したものとなっている。
従来の"白いリアニメイトといえば《怒りの天使アクローマ》"という固定概念を覆し、彼女の採用枚数はわずか1枚に抑えられている。

ベースとなるのはいわゆる緑白スレッショルドの《根囲い》《獣群の呼び声》《秘教の処罰者》パッケージである。リアニメイト専用カードを極力減らすことでデッキの安定性が高められている。

諸般のトラブルによりトップ8入賞は逃してしまったものの、2桁のライフを回復する爽快感、そして高い勝率がデッキの強さを物語っている。

 

 

 ・戦場の織り手

 旧枠モダンは除去が強い。現在のスタンダードにはない能動的な4マナの全体除去が2種存在するほか、単体除去の傑作である《終止》、黎明期より最強の火力呪文として君臨し続ける《稲妻》がある。

仮想的も定まりかけている今、コントロールデッキが隆盛するのは必然であると言えよう。

 

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一面の沼に咲く"華"

まずは使用者の多かった黒単コントロールを紹介しよう。

基本となる動きは《ファイレクシアの闘技場》で手札を確保し、《もぎとり》《燻し》などの優秀な除去で盤面をコントロール、最後は回復も兼ねた《堕落》や、《消えないこだま》によって対戦相手の勝ち手段を根こそぎ奪い勝利するのだ。おっと、今回は《触れられざる者、フェイジ》も活躍していたね。

優秀な除去が多いのもあるが、黒である大きな利点は手札破壊が使えることだろう。《強迫》の存在によって対コントロールが非常にやりやすくなっている。

単色デッキではあるが、除去の枚数、採用するクリーチャーによって非常に個性が出るデッキが黒単コントロールだ。今回は惜しくもTOP8進出ならずであったが、興味を持った方はぜひ自己の表現として黒単コントロールを握ってみて欲しい。

 

 

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ロングゲームの覚悟はあるか?俺にはある。

もうひとつのコントロールの王道、青白コントロールを忘れてはいけない。
黒単コントロールは必殺技を繰り出すデッキだが、こちらは相手が力尽きるまで真綿で絞めるデッキだ。デッキの大半がいわゆる"耐える"カードで構成されており、致命的な一撃を《雲散霧消》や《巻き直し》などで打ち消すことができる。

《聖なるメサ》《近づきがたい監視塔》は防御のカードだが、最後には万策尽きた対戦相手をついばむフィニッシャーとしての顔も持ち合わせている。

派生・同系統のデッキとしてロックデッキであるズアーの運命支配、黒を入れて手札破壊やアドバンテージの確保を可能にしたエスパーコントロールも存在する。

いずれも本戦では苦戦を強いられたデッキだが、必ず最適解となるアプローチが存在するアーキタイプであると筆者は考えている。

 

 

さて、ここからはTOP8へと駒を進めたいわゆる"勝ち組"デッキを紹介していこう。

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旧枠モダンにあるまじき(ならではの)パワーカードたち

今回最多数のプレイヤーが選択し、また最も多く決勝進出を果たしたナヤミッドレンジから紹介しよう。

強いけど勝てないと言われがちな《獣群の呼び声》だが、やはり旧枠モダンにおけるパワーカードは"象"だろう。《獣群の呼び声》表裏からの《包囲攻撃の司令官》は中途半端なデッキでは歯が立たない程の強力な動きだ。

そして何よりも、旧枠モダンのコラコマこと《荊景学院の戦闘魔道士》による対応範囲の広さがこのデッキの地位をより磐石なものにしているのだ。

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KK

旧枠モダン勢にとっては親の顔より見たカードかもしれないだろう。キッカー赤で《ショック》、キッカー白で《粉砕》、その両方使うこともできるわかりやすいアドを取るクリーチャーだ。2点の方では部族デッキの使うロードや、《包囲攻撃の司令官》を落とせる他、通常赤では触れない《ヴェクの聖騎士》《サルタリーの僧侶》といったプロテクション(赤)を除去することができる。白モードの標的はもっぱら《罠の橋》だが、《精神石》や《拷問台》など、案外対象に取れるものは多い。ここまでテキスト読み上げ。プレーンシフト版では隠されているが、部族エルフであることも見逃せないだろう。実際に今回参加していたエルフデッキにも4枚採用されている。

 

今回TOP8入りを果たしたものにはかつてアングリーハーミットと呼ばれていたデッキをリメイクしたものもあった。土地破壊を得意とするコントロールデッキだが、《獣群の呼び声》デッキであることからナヤミッドレンジに分類されていただいた。

旧枠モダンには《なだれ乗り》《すき込み》などの、現代では許されない優秀な土地破壊カードが揃っている。土地事故を誘発させることでのイージーウィンはもちろんのこと、《樹上の村》《フェアリーの集会場》などの強力なミシュラランドを能動的に処理でき、ナヤミッドレンジの対応力をさらに高めた構築と言えるだろう。

 

ナヤミッドレンジのカードパワーの高さ、メインボードでの対応力の広さ、間違いない、ナヤは旧枠モダン界のジャンドである(意味不明)

 

 

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ついに来たれり、青いビートダウン

青緑グランビルもTOP8入りを果たしたデッキだ。

グランビルといえば《空飛ぶ男》や《雲のスプライト》などの1マナ飛行クリーチャーを連想しがちだが、今回は不採用。代わりを務めるのはリターンの大きい《セファリッドの警官》だ。そんな3マナ1/1の攻撃をサポートするのはイニストラードを覆う影で再録された《かそけき翼》を始めとする大量のオーラ。前回のGP旧枠モダンでも話題になったが、《稲妻》環境である旧枠モダンでは《巨大化》はさながら修正値の大きい《顕在的防御》として機能し、オーラによるサイズアップも同様に除去耐性となることが多いのである。

警官が引けなかった場合のプランとして《マーフォークの女族長》が採用されている。事前に注目を集めていた緑単ストンピイやエルフは除去を苦手としており、それらに対しての制圧力は計り知れない。出遅れたデッキへのイージーウィンも期待できる、環境に合ったデッキ選択である。

 

 

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一切の隙なし

そして一際異彩を放っていたデッキが青緑コントロールである。もはや筆者でも分類がよくわからないためコントロールとさせていただく。

《フェアリーの集会場》は非常に強力な土地だが、《空飛ぶ男》などを用いたクロックパーミッションでは攻撃に3枚の土地を寝かすことが大きなネックとなっていた。しかし《種子生まれの詩神》があれば攻撃しつつ構えることができるのだ!

デッキの全貌は確認できなかったが、中・低速デッキへの高い殺意を持ったデッキであることは間違いないだろう。アグロデッキの対策によって低速化が進む旧枠モダンに一石を投じる素晴らしいデッキだ。

 

 

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こっちの山が上です

異彩の放ちっぷりなら何にも負けないであろうバベルもまたTOP8へと勝ち進んだデッキである。ネタデッキとして話題になりがちなバベルだが、アメニティードリーム吉祥寺店様で行われたGPTで幾度も勝ち越しており、地力の高さが伺える。

そもそも組めるだけのカードがあるの?と言われることもあるが、愚問である。カラーこそエスパーでほぼ固定されているものの、240枚の内容はしばしば議論に上がり、コントロール、リアニメイト、《死闘》バベルなど様々な候補が存在する。現在のデッキは飛行生物と除去がメインのようだ。

旧枠モダンにおいてはサーチカードが《魔性の教示者》しかないため、《機知の戦い》での勝利は難しいものの、相対する側にとっては何が入ってるのかすらわからないデッキと戦いつつ、突然勝利条件を満たしたエンチャントが降ってくる恐怖と戦わねばならないのだ。もちろんドロー次第で展開が大きく変わるので、サイド後の対戦も油断はできない。

バベルは、どこまで高みを目指すのだろうか。

 

 

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最速の部族

ゴブリンは3大会連続TOP8入賞となった。

《ゴブリンの戦長》の加入によって強デッキの地位を確立したものの、常に対策を意識されていることから使用者はあまり多くない。しかし意識されつつも勝ち抜くだけのパワーがあり、ベストデッキの1つであることは疑いようがないだろう。メインデッキはいわゆる固定スロットが多いが、《火葬》の有無、《ゴブリンの手投げ弾》の枚数、《怒鳴りつけ》の採用など、火力呪文の選択において差が出ることが多いようだ。

もはや語りつくしたようなデッキではあるが、メタゲームに合わせて細かなチューンを求められるデッキでもある。ぜひ挑戦して欲しい。

 

 

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UR Delver(大嘘)

準優勝の青赤テンポは、ゴブリンに負けずとも劣らない高速デッキだ。

バーンと見紛う大量の赤の火力呪文に加え、青の傑作火力《心霊破》があるほか、《渋面の溶岩使い》へと薪をくべるキャントリップ、パワーカードの《マナ漏出》がサポートを固める。

中でも《溶岩の猟犬》は注目のカードで、旧枠モダンのハゾレトとして名高いカードだ。《稲妻》圏外であるタフネス4が強力だとか、火力呪文でブロッカーがいなくなるからダメージが通りやすいとかの文字数稼ぎにしかならない解説はいらない。前のめりなデッキの《溶岩の猟犬》は強い、人が死ぬ、ハゾレト、なのである。

 

しかしこのデッキはある問題を抱えている。青と赤は対抗2色の組み合わせであるためにマナベースが非常に苦しい。2色を供給する土地は《シヴの浅瀬》、《渋面の溶岩使い》のための単色ペインランドことフェッチランド……。前述の《心霊破》《溶岩の猟犬》もあわせて非常に自傷ダメージが多い。《溶岩の猟犬》が防戦に使いづらいのもあり、「いかにして攻め続けるか」が鍵となる。前述のスーサイド要素もあり、1つのミスで瓦解することもあるデッキなのだ。

プレイングの難しいデッキではあるが、それだけ実力の出るデッキでもあるので興味のある方は臆せずに組んでみて欲しい。

 

 

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虚無の頂点に立ったのは《虚空》だった。

最後は優勝デッキである赤黒コントロールを紹介する。
除去に長けた2色の組み合わせはあらゆるリソースを根こそぎ破壊していく。《友なる石》《精神石》によるマナ加速からの《なだれ乗り》を擁しており、コントロールでありながらも能動的なブン回りがあるのが特徴だろう。リセットカードには《燎原の火》を採用しており、マナファクトの重要さが見て取れる。

《グレイブディガー》はこのデッキの要の1つであり、役目を終えた《ネクラタル》の再利用や、対処された《包囲攻撃の司令官》の回収を担う。サイクリングした《よじれた嫌悪者》を戦場に呼ぶために使うことさえあるのかもしれない。とにかく、《グレイブディガー》の存在によって除去されて困るクリーチャーがいない=自身のクリーチャーを遠慮なくリセットに巻き込めるようになっている。

このデッキをプレイする上で頭に入れておきたいのはやはり《虚空》の宣言だろう。盤面の脅威を対処できるだけでも強いが、手札も攻められるようにカードプールは把握しておきたい。2で宣言すると自身のマナファクトが壊れてしまうことには注意しよう。

 

いかがだっただろうか。

旧枠モダンはまだまだ研究の途上である。《永劫の輪廻》コンボやトロンそしてエターナルグリーンなどまだまだ最適な形が見つからずにいるデッキがまだまだあるのだ。現に今回も、想像もしていなかったような新たなデッキが多数活躍したように。万人受けする遊び方とはいえないが、旧枠モダンは楽しい。もし興味を持った方がいたら、ぜひ声をかけて欲しい。次のチャンピオンはあなたかもしれないのだ。

 

最後に改めて、優勝おめでとう!

 

 

 

 

 

 

こぼれ話

今回のGP旧枠モダンを語る上で、外せない話がある。

多くのプレイヤーが、「存在しないデッキをメタっていた」ことだ。

 ツイートで触れたのはTOP8だが、それ以外にも赤いデッキをプレイした多くのプレイヤーがサイドに過激な対策カードを取っていた。

白単、やはり恐ろしいデッキである。