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旧枠モダンを語る。旧→http://mesmericmask.diarynote.jp/ 欲しいものリストhttps://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/2FNE62OF99FHJ?ref_=wl_share

【資料】2018/7/1 第2回GP秋葉原(旧枠モダン)メタゲームブレイクダウン

(本記事は狐の社・二社目閉鎖に伴い消滅してしまう記事を、管理人の許諾を得て全文を転載したものです。)

 

2018年4月15日のGP旧枠モダンは成功、いや、大成功と言ってもいい盛り上がりであった。数少ないながらも全てのプレイヤーが最強を目指して戦いを繰り広げた。その白熱した試合や奇々怪々なメタゲームは主にTwitterを通して拡散され、ある事ない事を話題にされつつも、旧枠モダンはマジック界隈と言う水面に投げられた小石のように新たな波紋を生み出す事となったのだった。

 

そして、GP秋葉原から3ヶ月後の2018年7月1日。

前大会の成功を受けて、第2回GP秋葉原が開催された。

参加人数は驚愕の16人。関西から遠征に来たプレイヤーもいた。旧枠モダンは少しずつ、確実に広がりを見せている。筆者は確信していた。

 

今こそが旧枠モダンの躍進の時。旧枠モダン黄金時代なのだと――

 

今回も開拓者たちが調整した数々のデッキを分析していこう。

まずはグラフをご覧あれ!

 

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前回のメタゲームブレイクダウンでは“虚無のグラフ”“情報がない”と話題になったものだが、今回のグラフはしっかりと!余すことなく!情報を内包している!

今回もアーキタイプごとに分類していき、数々のデッキを紹介していく。

前回から続投されているデッキ群はどうしても手短になってしまうので、興味があれば過去記事も参考にしてみてほしい。

 

old-flame-modern.hatenablog.jp


▲“虚無のグラフ”はここで見れるぞ!

 

 

・アグロデッキ

 

アグロデッキの中でも、この環境を定義していると言っても過言ではないアーキタイプ、前大会の覇者“ゴブリン”はこの記事の先陣を切るに相応しいスターデッキだ。使用者は2名。トップ8進出率は50%と、この小さなフォーマットの中で名実ともにトップメタに至った最初のデッキという事になる。

 

今回は激化するエンチャント戦術に待ったをかけるためにタッチ緑で《帰化》を投入している型と、《ゴブリンの手投げ弾》を3枚に増量し更に尖らせる事でキルターンを早めた型の二種類が存在していたようだ。

ゴブリンをメタったつもりでいる多色デッキを踏み潰す為に《血染めの月》をメイン投入し、《ゴブリンの王》の山渡りで総攻撃をかけられるようにする等の細かなチューンの余地がある点が魅力の一つであるゴブリンだが、今回も彼らの適応力を存分に見せてくれそうだ。

 

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古参、歴戦といった印象の“ゴブリン”とは対照的に、今大会2人目の単色アグロデッキは中々見られる事のない特徴的なカードを数多く揃えた“緑単ストンピィ”だ。

こちらはDeck Techの方で優勝者のインタビューを交えて紹介させてもらう。

 

こうした単色デッキの他にも"アグロドメイン"の形態をとるデッキも存在した。3点火力に耐性を持ち、象トークンを止め、飛行で安定してダメージを与えられる《稲妻の天使》は旧枠モダンにおけるエース級クリーチャーだ。「どうにかして彼女を使いたい!」というデッキはこれまでもしばしば登場している。

《稲妻》と《部族の炎》、《心霊破》でバーンめいた勢いで相手のライフを削り、《獣群の呼び声》《秘教の処罰者》まで採用した環境最強の全部載せデッキを試してみるのも良いだろう。

 

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・ミッドレンジデッキ

 

環境の除去にはスタンダードというものがある。環境に蔓延っている除去がまず何かを推測し、それに耐性があるか否かでクリーチャーの除去耐性というものは決まるのだ。事前のリサーチでは除去がかなり《稲妻》に偏っている事が予想されていた。そして、《稲妻》で処理されにくいクリーチャーを軸にしたデッキが登場したのだ。

 

“黒緑ハスク”は《ナントゥーコの鞘虫》をキーカードとした中速デッキであり、《怨恨》と《センギアの従臣》を用いたハードパンチや《繁殖力》でのアドバンテージ勝負で勝ちに行くアーキタイプである。

 

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▲旧枠モダンにしては珍しい、完璧なシナジーである。

 

このデッキの作者が読めていなかったのは想像以上に環境がビートダウンに対して厳しかった点だろう。壊滅的に相性が悪い、とあるデッキが存在していたのだ。

 

“白単ミッドレンジ”である。

やはり今大会にも現れた白単デッキは、前回のアーティファクトシナジーを重視した型とは大きく異なる様相であった。《栄光の頌歌》の加護を受けた《白騎士》と《ヴェクの聖騎士》で殆どのクリーチャーが止まるという、シンプルながらも環境の穴を的確に衝いた戦略。そして、白単に纏める事で《物語の円》と《最下層民》《聖なるメサ》といった問答無用で詰みに持ち込める白のエンチャントを無理なく投入できる構築だ。《オーラ術士》でそれらを再利用する小技も見逃せない。

 

白単ミッドレンジは決勝戦で惜しくも事故で敗れたものの、緑単に対しては相性が非常に良いデッキでもあった。《革命家チョー=マノ》と《最下層民》のインパクトあるコンボも決めており、やはり旧枠モダンを定義する色は白だと再認識せざるを得ない。

 

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▲様々な“詰みポイント” これらすべてに対処可能なビートダウンなど存在しない。

 

《稲妻》と《獣群の呼び声》に対して耐性を持つ3/4以上のクリーチャーが環境的に強いという点はこれまでも度々議論の的となっていた。しかしながら、実用に耐えるレベルの3/4あるいは4/4のクリーチャーは数少ない。学者間では暫定的に3/3を完全に止められる《堅牢な防衛隊》ライン、それを一方的に倒せる4/4の《セラの天使》ライン、それを更に一方的に倒せる《皇帝クロコダイル》ラインとして環境を語る上では欠かせないP/Tのラインとされていたものだ。

 

コストの低いクリーチャーでこれらのラインを越える為に《栄光の頌歌》を選択した点は慧眼と言わざるを得ない。現代プレイヤーは想像がつきにくいかもしれないが、プロテクション黒や赤のついた3/3先制攻撃が横に並ぶのは想像以上に強固――というよりは理不尽さすらある布陣となる。

 

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▲一度体験してみれば分かる地上の止まりっぷりである。

 

 

・コントロールデッキ

 

非常にベーシックなコントロールデッキである“青白コントロールは《雲散霧消》や《中略》といったカウンターと《神の怒り》や《今わの際》のような除去を数多く採用し、《怒りの天使アクローマ》《聖なるメサ》をフィニッシャーに選抜している。サイドには《テフェリーの濠》などが取れる点がポイントだ。

 

ビートダウンに対して厳しいメタゲームが形成されている今、除去を始めとした多くのカードを腐らせることができる上に、数枚のキーカードに頼って構築されているデッキもあるため、青いコントロールは有効な選択だったと言えるだろう。

青いカードは弱いと評されがちだが、ドローとカウンターはその限りではない。遅いデッキが増えた今、青にもチャンスが巡ってきたという所だろうか。

ただし、前のめりなアグロには弱いようだ。仕方のない事だが。

 

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▲イマイチ採用率が低かったこの辺りもようやく息を吹き返したか。

 

同じく青白コントロールを選択したプレイヤーはもう一人いた。しかし、その内容は一般的なものとは大きく異なり、とあるコンボを加える事で差別化を行っていた。

《安らぎ》+《ズアーの運命支配》+《ゴブリンの太守スクイー》である。

 

“ズアーの運命支配”は、MTGwikiには「第8版で再録された時はフラッシュバックの存在があり完全なロックをかける事ができなかった」と記述されているが、旧枠モダンのフラッシュバックスペルは《獣群の呼び声》と《天啓の光》しか存在せず、《天啓の光》の採用率は低い。このデッキにとっては追い風と言えるだろう。

 

《安らぎ》のポテンシャルについては研究チームも把握していた。現代マジックと違い打点が低い事から、3ゲインが非常に重いのだ。《安らぎ》と《ゴブリンの太守スクイー》で半永久的にライフを回復し、クリーチャーが並んできたら《神の怒り》で流す。そして然るべきタイミングで《ズアーの運命支配》でロックをかけるのである。

 

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やはり《ゴブリンの太守スクイー》はコンボのお供だ。スクイーと言えばあのデッキは外せない。旧枠モダンにおける“元祖”スクイーデッキとも言えるナヤカラー“スクイーバインド”も今大会に引き続き参戦していた。

 

構築に大きな変化はないものの、《癇しゃく》と《渋面の溶岩使い》を携えて、対ビートダウンを更に強化してきた形である。

しかし、ここまででやり過ぎなほどの対アグロ戦略を見てきたが、やはり人は架空のアグロに踊らされているのではないだろうか…。

 

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いやいや、旧枠モダンはそれだけではない。ここで対コントロールを強く意識したとあるデッキを紹介しよう。“赤黒メガハンデスである。

 

《強迫》《葬送の魔除け》《荷降ろし》《呆然》と言った大量のハンデスを投入。相手の手札を速やかに空にする。フィニッシャーは言わずと知れた《拷問台》だ。《拷問台》は《物語の円》にも《神の怒り》にも、はたまた《罠の橋》にも邪魔されないフィニッシャーであり、白に有利を取れる絶妙な選択なのは間違いない。サイドに2枚投入された《野火》が白単に対するスタンスを象徴しており、何を意識したかが一目で分かるほどの憎悪が横溢している。

 

残念ながら旧枠モダンに《金切り声の苦悶》は無いので8Rackとは呼べないが、すさまじい優良スタッツを持ったクリーチャー(しかもほぼブロック不可能といってもいい)《オームズ=バイ=ゴアの邪眼》がフィニッシャーの片割れを務めている。

 

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▲3/6というスタッツに注目。硬すぎる。邪眼を越えられるクリーチャーはそういない。

 

同じ赤黒というカラーリングでは、やはり除去コンも存在していた。旧枠モダン屈指のパワーカードを使わない手は無い!と言った所だろうか。《稲妻》《終止》《ネクラタル》《虚空》といった良質な除去に《なだれ乗り》《包囲攻撃の司令官》を添え、そういったクリーチャーを《グレイブディガー》で回収するギミックも投入されている。

 

系譜としては前大会のジャンドミッドレンジ寄りの構成だが、赤黒に纏め、除去を増やし、マナクリーチャーの代わりに《精神石》などを投入する事でミッドレンジというよりも“赤黒コントロールとして後ろに寄った形の構築となっている。

 

筆者はやはり《包囲攻撃の司令官》は強い! と感じた。

メタゲームや環境に対する解答や新しいコンボやシナジーをこねくり回すのも間違いではないが、《獣群の呼び声》は強い! 《包囲攻撃の司令官》は強い! と言った初心を忘れない構築も大切なのではないだろうか。

 

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随分と長くなってしまったコントロール解説もようやく終わりを迎えようとしている。最後に紹介するのは“5cコントロールだ。5c…と言っても愚直に均等に5色のパワーカードを入れたデッキというわけではない。ナヤカラーをベースに、青と黒は《レガシーの兵器》のための色となっている。《爆発的植生》をマナ安定とし、ランプかタップアウトコントロールといった様相のデッキである。

 

採用されているカードも一癖ありながらも強力なカードが揃っている。対ゴブリン用秘密兵器である《陶片のフェニックス》と優良火力《ボガーダンの鎚》はその潤沢なマナから使い回しが始まると止めることは難しい。

マナが伸びてしまうと旧枠モダンの《コラガンの命令》こと《荊景学院の戦闘魔道士》や旧枠モダンのバハムートこと《荒廃の巨人》といった制圧力のあるカードが次々と登場する。

 

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▲荒廃の巨人がバハムートである事に疑問を持つプレイヤーはいないだろう。「ニュートラルではないだろ」とか「ドラゴンではなく巨人だが」「小せぇwwwwww」といった揚げ足を取るプレイヤーはもっと物事の本質を見極める力を養っていただきたいものだ。

 

…「旧枠モダンの○○」といった冗談はさておき。

前回に引き続き、統計上コントロールデッキが最も使用者が多いという結果となった。

アーキタイプ自体はバラバラだが、白と赤が色の強さ的にずば抜けているという前評判通り、《稲妻》や《終止》などのピン除去を大量投入できる赤と、エンチャントで対戦相手の攻勢を封じ込める白のどちらかがベースになっているケースが殆どとなっている。

 

しかしながら、ここまで度々「コントロールにアグロを詰みに持ち込めるカードがある」「強力なパーツを数多く有している」と言われながらも第1回、第2回とアグロデッキに優勝を明け渡してしまっていることも留意すべき点だと思われる。

結局のところ今回もアグロ勢からゴブリンを1人トップ8から蹴落としただけであり、果たして旧枠モダンでコントロールを握るのは本当に正解と言えるのか、疑問を投げかけるべき時が来たのではないかと筆者は考えている。

 

 

・コンボデッキ

 

今回コンボと言えるデッキは、上で紹介したコントロール寄りの“ズアーの運命支配”“スクイーバインド”を除いて残り2種類。基本セット2019で再録された《市長の笏》を軸とした“エターナルグリーン”は本大会に姿を現すことは無かったが、密かに前回優勝者の綴った調整録が公表されているので、興味のあるプレイヤーは是非こちらも目を通してみてほしい。

 

old-flame-modern.hatenablog.jp

 

昨今のマジックではあまり見受けられない、怪しげなコンボデッキが登場しがちな旧枠モダンのコンボ界隈だが、今回も特徴的な新顔が登場していた。

 

実は旧枠モダンのカードプールに追加ターンが2種類も存在しているのはご存知だろうか? 「同じようなカードが2種類8枚あればデッキになる」というのは有名な話だが、追加ターンが8枚あると何かできるのだろうか?

できるのだ。ミラーリがあればね。

 

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その戦略は《吠えたける鉱山》を設置する所から始まる。《濃霧》と《疲労困憊》で時間を稼ぎながら《爆発的植生》などでマナを伸ばし、《時間のねじれ》《時間の伸長》でターンを得て鉱山のアドバンテージを享受。最終的には《ミラーリ》で大量の追加ターンを得てフィニッシャーの《秘教の処罰者》で殴り切るといったものだ。

 

ターボフォグとエターナルブルーを組み合わせたようなこの斬新なデッキは、暫定的にだが“エターナルバント”と名付けられている。残念ながら勝率は高くなかったようだが、旧枠モダン界隈を彩る新たな発想に敬意を表したい所である。

 

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▲ロマンである。

 

こうした新顔が現れる中、前回に引き続きメタゲームの一角として存在感を示しているのは、もはや旧枠モダン定番のコンボデッキとなった“青赤ワイルドファイア”だ。

本大会の使用者数は3人、使用率18.75%と完全なトップメタである。

《併合》で土地を奪い、《シヴのヘルカイト》等をフィニッシャーにした従来型の"アネックス・ワイルドファイア"と、《石の雨》等を採用し《猛烈に食うもの》をフィニッシャーとした"マグニボア・ワイルドファイア"の二種類が存在している。

 

ワイルドファイア系統のデッキは非常に高いパワーを持ち、そもそもマナ否定戦術が強い事もあって事前に相当意識されていたアーキタイプだった。

ロングゲームを行うデッキにはサイドに《聖なる場》など露骨なメタカードが入っていたり、《ヴェクの聖騎士》や+1/+1カウンターで強化された緑の面々のような、そもそも《燎原の火》で流されないようなクリーチャーが出てきたり、カウンターの入ったコントロールに弱かったりと環境的には逆風だったようで、勝率自体は高くはない。

 

もっとも、《燎原の火》が効きにくい緑系デッキの台頭はワイルドファイア側からもある程度予想はされていたようで、《氷の干渉器》やサイドの《冬眠》など対策自体は行われていたようだ。緑単ストンピィの使用率がもう少し高ければまた少し違った結果になったのかもしれない。

 

今回は噛み合い方が悪かったにせよ、ガードが下がった所に一泡吹かせるパワーは持っている。トップメタに恥じないポテンシャルは依然としてあると言えるだろう。

 

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・総評

 

さて、随分と長くなってしまったが、ここまで全16プレイヤーが使用した13種類のアーキタイプについて解説してきた。第2回GP秋葉原は前回の2倍の規模となっており、それだけに使用されたアーキタイプも数多い。どうしても解説が冗長になってしまう点についてはご容赦願いたい。

 

今回は旧枠モダンにおいて大きな進展があった。第1回GP秋葉原を通してトップメタが確立され、プレイヤー数が増えたことにより研究が盛んに行われるようになり、そしてSNSやブログでの考察を通してメタゲームが可視化されたことで、プレイヤーのフォーマットに対する理解度は大幅に高まり、環境も煮詰まってきた。

ゴブリンとワイルドファイアの使用者が増え、かつて全てのアーキタイプが均一だった使用率に少しずつ差が生じ始めたのがその確たる証拠と言えるだろう。

 

現在のトップメタはワイルドファイアとゴブリンの2種。Tier2はそれ以外といった所だろうか。優勝は緑単ストンピィ、準優勝は白単と、勝率が使用率に比例していない点も面白いところだ。依然としてデータとして見るには母数の小ささが気になるところだが、このフォーマットを紐解いていく上では重要な情報だ。

 

旧枠モダンプレイヤーならば承知の所だとは思うが、このフォーマットは対策カードが極めて幅広く強力なものが揃っている。ぱっと出てくるものだけでも防御円、《窒息》、《沸騰》、《野火》、《崇拝》、《ヴェクの聖騎士》、《紅蓮地獄》、《血染めの月》、《迫害》、《撲滅》、《木っ端みじん》、《一掃》、《鎮圧》、《塩まき》、《トーモッドの墓所》、《魔力のとげ》、《象牙の仮面》、《道化の帽子》…など、枚挙にいとまがない。

 

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前大会で“トロン”“リアニメイトが姿を消したように、このフォーマットにおいては対策される事がそのまま死に直結しかねない。故に、最初からいる前提で構築時点で対策が組み込まれていたゴブリンとワイルドファイアは風向きが悪く、まったく意識されていなかった緑単ストンピィと、そもそも対策しにくい上に様々なデッキをメタれる白単が大いに活躍したのだろう。

 

重ねて言うが、今は旧枠モダン黄金時代だ。

数々のプレイヤーが切磋琢磨し、新たなデッキを構築している。

研究チームもある程度の時期までは「なんやかんやでゴブリンが最強でしょ」等と言っていたものだが、今大会とそれに向けた調整の末に、むしろ旧枠モダンの底の深さを再認識する結果となった。

 

本大会で分かったことの一つは、筆者も含めて「旧枠モダンの事を分かったつもりでいたプレイヤーも、実際は何ひとつ分かっていなかった」という事だ。

筆者はこの大会結果が旧枠モダンの最終形だとは全く思っていないし、他のプレイヤーもきっと同じだろう。まだまだ考える余地も、試せる事もたくさんある。

 

旧枠モダン――このフォーマットは、まだ我々を飽きさせてはくれないようだ。

(元記事掲載日時:2018/07/09)