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【資料】2018/4/15 GP秋葉原(旧枠モダン) メタゲームブレイクダウン

(本記事は狐の社・二社目閉鎖に伴い消滅してしまう記事を、管理人の許諾を得て全文を転載したものです。)

 

2018年4月15日。

ウィザーズ・オブ・ザ・コースト日本支社からほど近いとある会議室で、史上初の旧枠モダングランプリが開催された。

 

旧枠モダン。

モダンリーガルでかつ旧枠が存在するカードで対戦するというユニークなフォーマットであるが――ここで多くを書く必要もないだろうから、フォーマットのルールを理解している前提で話を進める。

初めての方はまず下記の「旧枠モダン案内」を参照してほしい。

 

old-flame-modern.hatenablog.jp


このフォーマットは非公式の同人フォーマットに他ならない。

 

インターネット上にはMTG関連の様々なサイトが存在するが、当然ながら未だ旧枠モダンに対応しているものは少ない。故に、この未開拓フォーマットを志すプレイヤーたちは皆一様に同じ事を考えただろう。「情報が不足している!」と。


各コミュニティでのゼロからの地道な研究と、噂話程度に流れる数少ない情報から構築されるデッキ。知識と経験により推測されるメタゲーム。どんなデッキが強いのか?どのカードが弱いのか?何も情報が無い。何もかもが手探りだった。
そうした暗闇の中、数多のプレイヤーが己の知略の全てを賭して生み出したデッキが、この記念すべき場で花開こうとしている。
筆者は断言する。彼らは“開拓者(パイオニア)”なのだ

 

では、彼ら開拓者たちがGP秋葉原という晴れ舞台でどのようなデッキを選択したか、本大会のメタゲームをデータという一面から見てみるとしよう。

 

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・全体の傾向

GP秋葉原のメタゲームを一言で表すならば“混沌”であろう。


見ての通りトップ8に同じデッキは1種類たりとも存在しない。使用率は全てのデッキが12.5%という、前代未聞のメタゲームが形成された。
図らずもこのGPは、全ての参加者が脳内で描く、思い思いの“最強”を表現する場となったのだ。


しかし、それでも全体の傾向というものは存在する。本大会トップ8のアーキタイプを大まかに分類してみると、アグロデッキが2種類、ミッドレンジデッキが1種類、コントロールデッキが3種類、コンボデッキが2種類となっている。ややコントロールが多い事に気付いただろうか?

環境に関する情報が圧倒的に足りない大会でコントロールデッキを握るというのは、一見無謀な挑戦のようにも見えるが、真意は如何なるものなのだろうか。

この先では更にこれらをアーキタイプごとに細かく分析していく。

 

 

・アグロ・デッキ

「メタゲームが固まる前の環境ではアグロを握るべきである。」とは有名な話であるが、旧枠モダン環境においてもそれは正しいという事が実績によって証明されている。


アグロデッキの王者、現在最高の使用率を誇る紛うことなきtier1“黒赤ゾンビ”は当然の如くその強さを見せつけており、トップ8進出率は脅威の100%を誇っている。
《アンデッドの王》《アンデッドの戦長》《不吉の月》という12ロード方式を取るこのデッキは非常に安定して高い打点を引き出す事ができ、《稲妻》と《火葬》といった優秀な火力も同時に採用できることが強みである。
《萎縮した卑劣漢》でナチュラルに墓地対策ができる点は《巧みな軍略》再録によって躍進したスレッショルドやフラッシュバック関連のカード、そしてリアニメイトにも強い。


黒赤ゾンビは初期からマイナーチェンジを繰り返しながら今なお残り続けているデッキでもあり、練り込みは十分だ。アドバンテージ獲得手段に乏しいという点以外隙のない極めてパワフルなデッキと言える。

参加者は仮想敵としてまずはゾンビを想定したに違いない。

 

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▲「蛆卑劣漢王戦長」とはゾンビのブン回りを指す有名なスラングである。

 


前評判においてアグロデッキはゾンビが一強であり、“緑単エルフ”“白ウィニーといった他のアグロはその陰に追いやられるだろうと噂されていたものだが、GP秋葉原が開催される約1週間前、突然の復活を遂げたとあるアグロデッキがあった。


その名も“赤単ゴブリン”
《モグの狂信者》《モグの下働き》《ゴブリンの群衆追い》といった高品質なゴブリンを《ゴブリンの王》で補助し、残るライフを《モグの狂信者》の起動型能力や《稲妻》《ゴブリンの手投げ弾》などの火力で削り取る、旧枠モダン制定当初から存在していた古き良きアーキタイプである。

 

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▲ゾンビと同じく、ゴブリンにも意外なほどに高品質なカードが揃っている。

 


安定した強さを持つが、どこか古臭さを感じさせる赤単ゴブリンには開拓すべきポイントが少なく、既に研究され尽くした上で最強になれないアーキタイプとして、昨今のプレイヤーには敬遠されがちであった。

そんなゴブリンに転機が訪れる。


過去のカードを使うフォーマットである旧枠モダンは、新セットのフルスポイラーが公式から発表された時点でそこに記載されている再録カードが使用可能となる。
彼らは新セットで新たな助っ人を仲間に引き入れていた。
旧枠モダン界隈を震撼させるほどのカード――スタンダードやモダンにも旋風を巻き起こすと噂される、あのカードがドミナリアに収録されていたのだ。


《ゴブリンの戦長》である。

全てのゴブリンに速攻を与え、コストを軽減する《ゴブリンの戦長》の再録によって、彼らは《ゴブリンの戦長》からの《包囲攻撃の司令官》という新たな勝利パターンを獲得したのだ!

 

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▲これがどれだけ強力な動きであるかは想像に難くない。

 


予感されるゴブリンの復活。それは机上の空論などではなく、歴とした事実であった。
赤単ゴブリンのトップ8進出率は驚異の100%。完璧と言ってもいいほどの戦績だ。全国10億人の赤単ファンよ、刮目せよ。今ここに、原初のアグロキングが完全なる復活を遂げたのだ。

 


・ミッドレンジ・デッキ
本大会においてミッドレンジはトップ8に1人しか残ることができなかったものの、それは一際インパクトのある布陣でこの合戦に臨んでいた。
一言で言い表すならば“オールスター”という表現が正しいだろうか。
GP旧枠モダントップ8唯一のミッドレンジデッキはご存知“ジャンドミッドレンジ”だ。
《渋面の溶岩使い》《獣群の呼び声》《包囲攻撃の司令官》《双頭のドラゴン》といった旧枠モダンにおけるパワーカードをこれでもかと詰め込んだ絵に書いた様なミッドレンジである。

注釈:旧枠モダンの理念を忠実に反映するならば“デアリガズ”と呼称すべきだろうが、今回は若年プレイヤーへの配慮を兼ねてアラーラの次元名およびタルキールの氏族名を3色の略称として使用することにする。


旧枠モダンにおいて多色地形はペインランド10種、友好色フェッチランド、タップインデュアルランド、《真鍮の都》、《反射池》、《宝石鉱山》しか存在せず、ミッドレンジ帯の三色デッキは常にマナベースの不安に悩まされるものだ。しかしながらジャンドは《極楽鳥》と《不屈の自然》を採用することでそれを解消し、強力なカードをスペースいっぱいに凝縮することを可能としている。

“緑系三色ミッドレンジ”の系譜に連なる比較的安定感のあるアーキタイプだ。

 

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▲《極楽鳥》→《獣群の呼び声》→《獣群の呼び声》フラッシュバックに泣かされたプレイヤーは数知れず。

 


赤と黒を交えたことによる除去の厚さも特筆すべき点だろう。
《稲妻》《終止》に加えて、旧枠モダン最強クリーチャーこと《怒りの天使アクローマ》や諸々のアーティファクトすら除去できる《虚空》までも採用。先程紹介した2種類のアグロを始めとした、所謂フェアデッキを大いに意識した構築となっている。

 

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▲赤黒は旧枠モダンにおける最強の除去を有している。

 


他のトップ8アーキタイプと比較するとシナジーに乏しい構築だが、パワーカードの群れはそんな些細な事を吹き飛ばせる力がある。そう、ジャンドもまたトップ8進出率100%を誇るアーキタイプである。もはやジャンドがミッドレンジの最高峰である点に疑問を抱く者はいないだろう。

 

統計ではアグロ〜ミッドレンジまでの速度帯のデッキ全てに《稲妻》が4枚投入されている。5枚目の《稲妻》としての《火葬》もわずかだが採用されていた。やはりと言うべきか《稲妻》のバリューは圧倒的であり、3点火力は殴れる速度帯のデッキには必須という事だろう。

 

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▲やはり稲妻は強かった。環境を定義する1枚であろう。

 


トップ8に残った強豪たちのデッキには《稲妻》と1:1交換されない《獣群の呼び声》や、タフネス4の《鋼のゴーレム》《稲妻の天使》が散見されている。
既に《稲妻》が環境にひしめき合っており、《稲妻》耐性を持たないクリーチャーを投入するにはリスクが付きまとうという点において強豪たちの意見は一致していたのだ。
《惑乱の死霊》といった一見強力なクリーチャーが意外にもその姿を見せないのは、まさにそういった点を天秤にかけて取捨選択した結果だと言えるだろう。

 


・コントロール・デッキ
コンボかアグロと予想されていた旧枠モダンのメタゲーム予測に真っ向からNoを突きつけるアーキタイプが彼らコントロール組だ。

コントロールと一括りにはしたものの、その実態は旧枠モダンの混迷極まる環境を示すかのように三者三様まったく異なる姿であった。

 

旧枠モダン制定初期において、万能全体除去《神の怒り》に加えて《マナ漏出》や《雲散霧消》などのカウンターを取り入れた青白コントロールはしばしば研究の対象に挙げられていたものだ。今回コントロール組の先鋒として紹介するアーキタイプはその流れを汲む“ジェスカイコントロールだ。

 

このデッキがジェスカイカラーである理由の一つは、タフネス4と攻防一体の警戒飛行速攻という優秀なアビリティが特徴の《稲妻の天使》であろう。
彼女は旧枠モダン最強クラスのスペックを持ちながらも合うデッキが無いと言われ続け、やや不遇な扱いを受けてきたものだが、ここに来て遂に上位陣に並び立つことができたようだ。


《物語の円》《テフェリーの濠》といったエンチャントで敵の攻勢を封じ、前述の《稲妻の天使》や《怒りの天使アクローマ》《聖なるメサ》でフィニッシュするその戦いぶりはただの受け身のコントロールとは一線を画している。

 

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▲どちらもアグロに対して制圧力を持つ。《物語の円》を加えれば堅牢無比な要塞と化すだろう。

 


このデッキの強みはサイド後にコントロール以外の別プランを取れる点だ。
サイド後に除去を減らし重めのカードを入れるデッキに対して《なだれ乗り》を加えることでダメージを稼ぎつつ手を遅らせ、火力呪文を合わせて早期にライフを削り切ることもできる柔軟なデッキなのだ。

《稲妻の天使》を使うならば攻めるデッキであるべきだが、完全に攻める構築にしてしまうとマナベースの弱さから事故率が高くなってしまう。このジレンマをプランの分化という手法で解決したデッキと言えるだろう。


この新鋭デッキもまたトップ8進出率100%という驚異的な戦績を挙げている。
相手によって手を変え品を変え、変幻自在の戦いを見せるジェスカイコントロールは旧枠モダンの新星となるに違いない。


コントロールデッキとして調整される際に、逆に色を減らしたデッキも存在する。
チーム柏のとある強豪プレイヤーが持ち込んだ一際目を引く特異なアーキタイプ――“白単コントロールはまさにその好例だ。
白いコントロールデッキの嗜み《物語の円》と《神の怒り》は勿論完備。《罠の橋》なども投入しアーティファクトシナジーを重視したこのデッキはトップ8の強豪たちも手放しで賞賛するほどの高い完成度を見せている。


この特異なアーキタイプには後ほど「Deck tech」の記事で特別な解説を加える予定だ。今言えることは、このデッキの使用者は確実に増えるだろうし、旧枠モダンをプレイする上で無視できない存在になっていくだろうという予測だけだ。
このデッキを持ち込んだのは8人もの参加者の中でたった1人。

勿論トップ8進出率は100%だ!

 

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▲旧枠モダンにおける“白の嗜み”がこれだ。

 


先の白単コントロールからも分かるように、予想が次々と裏切られるのがこの旧枠モダンというフォーマットだ。重コントロールは青という昨今の常識――というよりも固定観念だろうか。それを打ち砕くデッキはなにも白単コントロールだけではない。


トップ8進出率100%を誇る凶悪アーキタイプ、黎明期より調整を加え続けて今に至る“スクイーバインド”はナヤカラーのコンボ搭載型コントロールと言ったアーキタイプだ。
手札をランダムに捨ててダメージを与える《嵐の束縛》と、墓地から手札へ戻ることができる《ゴブリンの太守スクイー》を組み合わせることで除去手段とフィニッシャーを兼ねる事ができる。

 

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▲旧枠モダンが持つ“可能性”の一片。

 


これ自体は過去にも存在していたコンボだが、旧枠モダン特有のアレンジとして界隈における「プレインズウォーカー」とも言えるカードが採用されている。
旧枠モダン界のプレインズウォーカーとは一体なんなのだろうか?
その答えはこれだ。

 

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▲その勇姿をご覧あれ!

 

 

《愚鈍な自動人形》だ!
プラス能力でカウンターが乗り、マイナス能力でカードを1枚引く。なるほどプレインズウォーカーである。コミカルな見た目だからといって侮るなかれ。スクイーとの強力なシナジーを持つこのカードは《嵐の束縛》と同じくこのデッキのキーカードと断言できる。スクイーとの合わせ技で強力なアドバンテージカードとなる《ゴブリンの知識》も見逃せない1枚だ。


勿論アグロデッキに対する対策も完備されている。
自分から手札を捨てに行くこのデッキは《罠の橋》を強力に使う事ができ、《雹の嵐》は《サルタリーの僧侶》や《ヴェクの聖騎士》にも対応ができる。
《稲妻》で処理出来ない相手を想定した賢い選択と言えるだろう。
こういった特殊なアドバンテージ源と特異なフィニッシュ手段を採用したデッキが勝ち上がる事に旧枠モダンが持つ無限の可能性を感じざるを得ない。

 

統計的に見ると3つのコントロールデッキの内2つが《罠の橋》を4枚投入しており、サイドボードを含めれば3つ全てが《物語の円》を採用している。そして、《神の怒り》も枚数にばらつきさえあるものの3デッキ全てに採用されている。

 

この点は今大会の出場者の対アグロ意識の高さを象徴しており、情報が少ないながらも各々のプレイヤーが「ゾンビとゴブリンはいる!」という想定でデッキを構築した証だ。
また、この結果はっきりした点はもう一つ。旧枠モダンにおけるコントロールの真髄は白にあるという点だ。

 

 

・コンボ・デッキ
メタゲーム及びデッキ解析もようやく終わりを迎えようとしている。最後に分析するアーキタイプ“コンボ”だ。僅か1000枚にも満たない旧枠モダンのカードプールにおいてもコンボデッキといったものは存在する。

 

旧枠モダンとは懐古のフォーマットでもある。そのカードプールには古のコンボパーツが眠りについているのだ。それ故に旧枠モダンにおけるコンボデッキは過去存在したコンボをなぞる形となる。この名に懐かしさを覚えるプレイヤーも多いだろう。まず紹介するのは、神河+旧ラヴニカ期のスタンダードより“アネックス・ワイルドファイア”だ!

 

《併合》と《押収》によって対戦相手の土地を奪い、《燎原の火》をブッ放す。

単純な構造ながらその破壊力は尋常ではない。トップ8進出率は100%と、想定されていたメタゲームの外から予測不可能な一撃を撃ち込んだ形と言える。

《燎原の火》が決まりさえすれば低速デッキはリカバリー不可能――いや、はっきりと言ってしまえば即死に近い状況に追い込まれ、アグロデッキも盤面が無残にも流されトップデッキでの立て直しを強要されることとなる。奪った土地と前もって置いておいた《友なる石》と《精神石》のおかげでアネックス・ワイルドファイア側の被害は最小限というわけだ。《ブーメラン》《マナ漏出》に加えメインに投入された《紅蓮地獄》のために対応力も十分にあり、コントロール寄りのコンボといった印象のスクイーバインドとは対照的にコンボ寄りのコントロールといった様相だ。《罠の橋》の存在を見越し、アーティファクト破壊を兼ねる《破砕》を2枚デッキに組み込むビルダーのセンスも見逃せない。

注釈:スクイーバインドとアネックスワイルドファイアがコンボかコントロールかについては諸説あるだろうが、今回はコンボが決まった際の破壊力を基準にカテゴリー分けをしている。

 

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MTGには様々な攻め方があるが、土地を攻められて動けるデッキはそうはいない。

 

 

旧枠モダンにおけるこのデッキの最大の特徴はフィニッシャー選択だろう。

赤か青で《燎原の火》で流されないタフネス5を持つクリーチャーにはプレイアブルなカードが極めて少ない。悪くてデメリット能力持ち。良くてフレンチバニラがせいぜいだ。今回は《シヴ山のドラゴン》と《シヴのヘルカイト》という条件を満たすカードの中でも最も強力な2種を2枚ずつ散らして採用している。今後はこれがアネックス・ワイルドファイアの基本になっていくだろう。

 

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▲この2枚が大真面目にフィニッシャーとして採用される事に感動を覚えるファンも多いのでは?

 

 

さて。今紹介したアネックス・ワイルドファイアのコンボは事実上の即死でしかなく、相手を動けない状態にした後にフィニッシャーで数回攻撃する事で勝つアーキタイプである。最後に紹介するアーキタイプはそれとは対照的に、20点以上のダメージによる完全な即死を狙う特徴的なデッキである。

マスクス+インベイジョン期より、“再供給ファイア”がエントリーだ!

 

再供給ファイアは《不屈の自然》《爆発的植生》といったランドブースト系スペルを連打し、十分に基本土地が並んだところで《早摘み》によって土地をアンタップ。その後《再供給》から《早摘み》を使い回す事によって大量のマナを出し、《とどろく雷鳴》でフィニッシュするコンボデッキだ。

 

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▲旧枠モダンにはチェインコンボだって存在する。

 

 

基本土地が大量に並ぶ関係上、《部族の炎》や《俗世の相談》を強力に使うことができる上、破滅の刻で追加された《巧みな軍略》がデッキの強化に一役買っており、大量のライブラリー操作・ドローによって意外なほどの安定性を誇っている。

その代償として相手の攻勢を防ぐカードは少なくなってしまっているが、最低限相手の速度を削ぎ落とす事ができればコンボを決めて勝つことは容易だろう。

それを証明するかのようにトップ8進出率は驚異の100%を誇っている。新たなコンボデッキがこのGP秋葉原の場で花開いた瞬間ともいえる。

 

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▲マナベースの脆弱性が取り沙汰される中、これらのカードを上手く使える数少ないデッキだ。

 

 

以上のように、旧枠モダン環境においてもコンボデッキは確かに存在するが、前評判とはその内訳が異なっている点が着目すべきポイントだろう。

 

前評判では《根囲い》によってウルザランドを揃える事で《トリスケリオン》等の重量級クリーチャーを展開する緑系の“トロン”と、《蘇生》《ゾンビ化》によって《怒りの天使アクローマ》を釣り上げる白か黒を軸にした“リアニメイトが意識すべきコンボデッキと言われていた。

 

参加者の間でもそういった情報は共有されていたようで、殆どのデッキのサイドボードに《なだれ乗り》等の土地破壊や《帰化》のようなアーティファクト対策が複数枚採用されていたし、《トーモッドの墓所》や《地の封印》も数多く確認できた。

アニメイトは最大勢力と予想されていたゾンビの《萎縮した卑劣漢》に弱い点も敬遠された理由だろう。

 

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▲有名になり過ぎたが故に見送られたアーキタイプたち。

 

 

全ての参加者が意識的にサイドを割いている状態でこれらのデッキが勝てるかと言えば、答えはNOだろう。結局の所、トロンもリアニメイトも参加者に意識された時点で「勝つためのデッキ選択」からは外れてしまったのかもしれない。

アネックス・ワイルドファイアも再供給ファイアも上記2種と比較するとややマイナー所のコンボデッキではあるが、筆者はこれらこそが「勝つためのデッキ選択」に他ならないと確信している。

 

 

・総評

以上がGP秋葉原で存在感を見せたデッキたちだ。

どれも開拓者たちが己の知識を結集した珠玉の一作となっている。

 

総評としては、黒赤ゾンビと赤単ゴブリンを意識する所から構築が始まっていたと分析できる。フェアデッキ対策を強く意識したジャンドミッドレンジと、《罠の橋》《物語の円》を搭載したコントロール組がその最たる例だろう。そして、研究が進みメタられ始めたトロンとリアニメイトを敢えて外し、別軸からの決着を試みるコンボデッキ組がその隙を衝くという構図だ。トロンとリアニメイトがメタゲームから消え去った事により、《怒りの天使アクローマ》の使用率が大幅に低下したことも重要だ。

 

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▲旧枠モダン最強のクリーチャーだが、今回はあまり活躍が見られなかった。

 

 

また、白単コントロールを除いて全員が赤を含んだデッキである事も特筆すべき点だ。《稲妻》《包囲攻撃の司令官》《紅蓮地獄》といった受けの広いカードに加え、《終止》《稲妻の天使》などの強力な多色カードに富む赤は二色目三色目として選ぶにはベストな選択だったのだろう。

 

全てが手探りの現状の旧枠モダンにおいて、デッキ構築・選択における読み合いは勝敗を左右する大きなターニングポイントとなり得る。それもその筈で、言ってしまえば誰も何が強いデッキなのか未だに分かっていないのだ。

しかし、そうした現状も2018年4月15日にようやく終わりを告げる。このGP秋葉原の結果が今後の旧枠モダンにおける原点となるに違いないからだ。

 

果たして開拓者たちが切り開いた地平を歩むものが現れるのだろうか。

それはまだ、誰にも分からない。

 

 

 

   

▲旧枠モダン界隈を震撼させたゴブリンの戦長が再録されるドミナリアを買いましょう。神ゲーことダークソウルも予約しましょう。あとこの間ネウロ全巻買って読み返したんですけど異常に面白かったんでこれも買いましょう。重要です。

 

(元記事掲載日時:2018/04/17)