(本記事は狐の社・二社目閉鎖に伴い消滅してしまう記事を、管理人の許諾を得て全文を転載したものです。)
サムネ:皇帝クロコダイル
数々の激戦を制し、第2回GP秋葉原の優勝者となったのは紙袋氏(@kaeruyuma)の緑単ストンピィだった。マナレシオの高いクリーチャーを展開し、オーラとパンプアップ呪文で補佐しながら直線的に突き進み、対戦相手を蹂躙する。そんなデッキである。
新たなアーキタイプの登場に沸き立つ旧枠モダン界。GP秋葉原に行くことができなかったプレイヤーと、これから旧枠モダンを始めようというプレイヤーのためにも、この場で“Deck tech”の名を借りて新たなデッキを紹介するとしよう。
紙袋の「緑単ストンピィ」 / 2018/7/1 第2回GP秋葉原 優勝
土地 24
4 《樹上の村/Treetop Village》
20 《森/Forest》
クリーチャー 20
4 《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
4 《エルフの戦士/Elvish Warrior》
4 《リバー・ボア/River Boa》
4 《狩りをする恐鳥/Hunting Moa》
4 《皇帝クロコダイル/Emperor Crocodile》
スペル 8
4 《巨大化/Giant Growth》
4 《獣群の呼び声/Call of the Herd》
エンチャント 8
4 《怨恨/Rancor》
4 《ブランチウッドの鎧/Blanchwood Armor》
サイドボード
4 《濃霧/Fog》
4 《疾風のデルヴィッシュ/Whirling Dervish》
3 《帰化/Naturalize》
2 《樫の力/Might of Oaks》
2 《ロウクス/Rhox》
▲美しいリストである。
以下、デッキ製作者である紙袋氏へのインタビューを交えてこのデッキを解説していく。
――「では、インタビューを始めさせていただきます。まずは、優勝おめでとうございます。どういった経緯でこのデッキができたかを教えていただけますか?」
紙袋「ありがとうございます! このデッキを作ったきっかけは、まず緑を使いたいと思ったからですね」
――「緑を使いたい…。それは、メタ的な意味でしょうか?」
紙袋「いいえ、好みです!」
――「好みですか…。いやまぁ、このフォーマットはそういう側面がありますからね」
紙袋「ええ、《皇帝クロコダイル》が凄く好きなんですよね。あと《ブランチウッドの鎧》ですね。これが使いたくて緑単に絞りたかったんです。それで200枚くらいの緑のカードプールを一通り見てみると、カードパワーのすごく高いカードが混ざってるんですね」
――「《獣群の呼び声》ですか?」
紙袋「そうですね。お察しの通り《獣群の呼び声》です。それと、《怨恨》に《狩りをする恐鳥》あたりですね。その辺りからデッキ作りが始まりました。特に《獣群の呼び声》は明らかに強いんで、使われる前提でデッキを考えていましたね」
――「《狩りをする恐鳥》は珍しいカードですよね。初めて見ました」
紙袋「そうみたいですね。対戦相手にも驚かれました。これが本当に強いんですよ。2ターン目の《エルフの戦士》から繋げるだけで3/4になって象トークンに止められずに殴れるようになりますし、恐鳥単体でも相手は相討ちしたくないから攻撃の手が止まるんですよね」
――「そう聞くと相当強そうですね…」
補足をすると、旧枠モダンでは2マナのクリーチャーが弱いというのはしばしば話題になっていた。これには《獣群の呼び声》を始めとした3/3に止められてしまうという理由がある。そのため、緑は1ターン目にマナクリーチャー、2ターン目に《獣群の呼び声》というテンプレートが確立しており、2マナ域のクリーチャーは軽視されがちな風潮があった。
ここで《狩りをする恐鳥》が光る、というわけだ。
旧枠モダンはカードプールが狭く、カード評価も単体でのパワーに引っ張られがちだ。しかし紙袋氏だけでなく準優勝の白単も《栄光の頌歌》を貼ることで《白騎士》と《ヴェクの聖騎士》を、一方的に3/3を倒せるサイズにまで引き上げる構築をしており、勝者はカード単体の強さだけでなくシナジーを意識してデッキ構築をしている事が分かる一幕だ。
▲採用率の低いカードたちだが、このデッキでは主役級の活躍を見せていた。
――「他に、これは強い! と思ったカードはありましたか?」
紙袋「だいたいはここまでに名前を挙げたカードですけど…。《ブランチウッドの鎧》は見込み通り強かったですね。1枚で+4/+4とか+5/+5とか上がるのは壊れてます。変に色を足すよりもよほど強いと思いますよ。《怨恨》でトランプルもつけられますしね。《皇帝クロコダイル》もサイズ大きくて活躍してくれましたし」
――「これぞ緑単、といったサイズ感ですよね」
紙袋「《樹上の村》も凄く強かったですね。場が流されてからこれだけで殴り切れるゲームもありました」
――「なるほど、デッキの出来自体には満足しているということですかね」
紙袋「いやー…改善点もかなり多かったですよ」
――「そういえば、紙袋さんは旧枠モダンの大会は初めてでしたね。では、初の実戦を通して評価が変わったカード…弱かったと思ったカードや、改善点についても思い当たるところを教えていただけますか?」
紙袋「メインボードだと、《リバー・ボア》が酷かったですね。青いデッキが少なすぎて渡れないですし、《モグの狂信者》《渋面の溶岩使い》で焼かれるのが弱すぎました。再生マナを一々残しておくわけにはいきませんから」
――「ああー…《リバー・ボア》が弱いという話はよく聞きますね…。確かに2点までのダメージで焼かれるのはそれと《ラノワールのエルフ》だけですし、弱さが際立ちそうです。他の2マナだと候補は何があるんですか?」
紙袋「対戦相手の方に教えてもらったんですけど、《梢の蜘蛛》がめっちゃ強そうなんで、すぐにでもそれに入れ替えようと思います。マスターピースですよ。これでこのデッキはもっと強くなりますよ」
――「めっちゃ強そう!(大声)」
▲飛行を止められ、恐鳥を合わせれば一瞬で《稲妻》圏外のタフネス4になれるのは強そうだ。
紙袋「それと、サイドボードですね。メタが分かってなかったのもあって要らないカードが多すぎました。改善点だらけです。《疾風のデルヴィッシュ》とか。黒単がいなくて赤黒が多かったんで、サイドインできなかったですね、《リバー・ボア》と同じような理由で全然使えませんでした」
――「赤黒相手だと《狩りをする恐鳥》で強化してもなお弱そうですしね」
紙袋「そうですね。あと《濃霧》は《雹の嵐》にすべきだったと思いますし、《ロウクス》は《年経たシルバーバック》の方が強そうですね。《樹上の村》を使ったりしていると再生のためのマナを残すのがきつ過ぎるので、1マナで構えられる方がいいですね。…あ、《苔の怪物》でもよかったかもしれません」
――「こ、《苔の怪物》? すみません、能力を教えていただいても…?」
紙袋「いや、ただの5マナ3/6バニラなんですけどね。タフネス6があまりに硬すぎるんですよね。どうせ《怨恨》つけて殴るんで、タフネスが高い方がありがたいんです」
――「今日同じく3/6の《オームズ=バイ=ゴアの邪眼》が硬すぎるという話題も出てましたしね。このくらいのサイズだとコンバットで討ち取れるカードは殆どいないようなものですね」
紙袋「ですね。3/6はこのフォーマットにおいて最強に限りなく近いサイズだと思ってます。それと、《帰化》は4でした。《物語の円》《拷問台》《最下層民》…噂には聞いてましたけど本当に置物が強いですね。割りたいものだらけだったんで次は4にします。飛行触れないんで《ハリケーン》とか《翼わな》も候補ですかねー。ハリケーンはワンチャン本体火力にもなりますし」
――「これ延々とサイドボードの話をすることになってしまいそうですね。長くなりそうなので割愛しつつ掲載させていただきますね」
▲紙袋氏は旧枠モダン大会初参加という事もあり、学びが多かったようだ。
――「では、試合について振り返りつつデッキの強みを教えていただいてもよろしいですか?」
紙袋「はい。やはり完全なメタ外だったのが大きかったとは思います。1戦目の1ゲーム目では相手が緑単エルフとアーキタイプを間違えてくれたおかげで《稲妻》の使いどころを間違えてくれて押し切れましたし」
――「《ラノワールのエルフ》《エルフの戦士》だけ見たら間違えそうですよね」
紙袋「本戦まで誰にもデッキの内容を見せていませんでしたから。誰も意識してなかったんですよね。簡単に《ブランチウッドの鎧》や《怨恨》をつけられて、《巨大化》での除去避けもすごくやりやすかったです。この辺が通っちゃうとだいたい押し切れますね。ただ殴ってるだけで勝てます」
――「こう見るとオーラが多いですよね。黒系のデッキは厳しいんじゃないですか?」
紙袋「《巨大化》で避けられない除去は全部嫌ですね…。盤面を更地にされてから立て直す手段がないんで《恐怖》《終止》《ネクラタル》なんか連打されると目も当てられない事になりますから、会場に黒が少なかったのはありがたかったです。唯一当たった黒はメガハンデスだったんでどうにかなりました」
――「アドバンテージ回復手段もないですしね」
紙袋「ですね。黒が増えるようならサイドに《繁殖力》もありかもしれませんね」
――「また話がもとに戻ってしまいそうですね。最後の白単相手はどうでした?申し訳ないのですが、相性的にかなり厳しいと思っていました」
紙袋「相手が事故ってくれたんで助かりました。正直詰む要素だらけですし辛いマッチアップだと思います。ゴブリン、ドメイン、メガハンデスと良い当たりはしていたんですけど、白単だけは明確に不利ですね」
――「事故った相手をそのまま轢き殺せるパワーはありそうですよね。生半可なデッキだと《ヴェクの聖騎士》に止められている間に《最下層民》引かれて負けた~なんてことがありますが…」
紙袋「パワーはありますよ!相手のライフを削る速度が本当に速いんで、ブン回りか相手の事故のどっちかが起きた時に有無を言わさずゲームを取りにいけるのが強いです」
――「緑単といえば!みたいな所はありますよね」
▲こういう事が起こるリスクを跳ね除けて優勝できるほどのパワーがある。
紙袋「デッキについてはだいたいこんな感じですね」
――「貴重なお話、ありがとうございます。ついでと言ってはなんですが、旧枠モダンの魅力についても語っていただいてよろしいですか?」
紙袋「もちろんいいですよ!やっていて思ったのは、アーキタイプが本当に多いな、と。カードプール自体は狭いんですけど、カードパワーが平坦なんで、プレイアブルなカードが多い印象でした。かなり幅広く好きなデッキが組めるんじゃないでしょうか」
――「補足しますと、本日16人参加でアーキタイプは13種類です」
紙袋「非公式のフォーマットだから…というのはあると思うんですけど、それでもこれだけ多様なデッキがあるのは凄いことですよ。カードも絶妙に懐かしさを感じるものが多くていいですよね。8版9版辺りの頃のプレイヤーは胸に来るものがありますよ。自分も思い出の《皇帝クロコダイル》で好き勝手やってるわけですからね」
――「思い出のカードが使える!しかも一線級で!というのはこのフォーマットの重要なポイントですね。是非当時を思い出しながらプレイしていただきたいものです」
紙袋「それが大抵古いカードなのも重要ですよね。全部が全部再録済みで、そのうちの多くが今は使われていないカードですから、安いんですよ。本当に安い。それでいてバランスが崩壊しているわけでもなくゲームができるから凄いですよね」
――「懐かしい!安い!楽しい!ですね。今度からこれをスローガンにしましょうか?…では長くなってしまいましたが、最後に一言コメントをいただいてこのインタビューを終わりにしたいと思います。優勝者、紙袋さん。一言どうぞ!」
紙袋「《皇帝クロコダイル》をよろしくお願いします!!!!!!」
(元記事掲載日時:2018/07/14)